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校長室だより 第23号
平成26年12月19日(金)

2学期終業式

 まず、始めに皆さんに一つ質問します。「人間が他の人間に贈ることのできる最大の贈り物は何だと思いますか。」心の中で応えてみてください。

 今日は、今道友信氏の「人生の贈り物〜四つの物語」という本の2つの物語の中から、心に残った言葉を紹介します。

 今道友信氏は、東京大学名誉教授で、哲学者であり、現代美学の国際的な権威でもあります。2012年にお亡くなりになりました。

 この本は、私たちが「人生最大の贈り物とは何か」に気づくための、考えるための、今道氏の若き日の物語です。喜びと悲しみと挫折に満ちた4つの物語を通して、私たちは自然と自分の生き方を考えるようになります。

 優しく、暖かく、あっという間に読めてしまう、小さな本です。

 若き日の今道氏は、戦後まもなくパリ大学の講師としてフランスに行きます。そこで、ガブリエル・マルセルという著名な哲学者と運命的な出会いをします。感動的な言葉をいくつも授かります。いよいよ帰国するというとき、マルセルは今道氏に聞きます。私が冒頭にした質問です。

 「人間が他の人間に贈ることのできる最大の贈り物は何だと思いますか。」

 答えに窮しているとマルセルはにこやかに語ります。「それは『良い思い出です』です。どれほど立派なものでも、品物は壊れたり、色あせたりしますが、良い思い出は一生変わることがありません。」

 ところで皆さんは、人は人生の中でどのくらいの人と出会うと思いますか。人生80年生きるとして、次のように言われています。

何らかの接点を持つ人 30,000人
同じ学校や職場、近所の人  3,000人
親しく会話を持つ人 300人
友人と呼べる人 30人
親友と呼べる人 3人 だという説があります。

 地球には72億人もの人がいるのに、出会える人の数はそれくらいしかいないのです。

 そして、その確率は、

何らかの接点を持つ人と出会う確率は1/240000(24万分の1)
同じ学校や職場、近所の人と出会う確率は1/2400000(240万分の1)
親しく会話を持つ人と出会う確率は1/24000000(2千400万分の1)
友人と呼べる人と出会う確率は1/240000000(2億4000万分の1)
親友と呼べる人と出会う確率は1/2400000000(24億分の1)

 出会いはいつも、奇跡なのです。

 出会ったときは、お互いにどのくらいの影響を与え合うのかは気づきません。その出会いがどのくらいの意味を持つのか、すぐに分かることもありますし、何十年のときを経て初めて気づくこともあります。どんな時も、真心を尽くして、誠実に人と接することで、出会いの意味は決まります。

 もう一つの話。それは、中学生のときの恩師に頂いた言葉です。「いいか、君、ドストエフスキーを読みたまえ。それは君の青春を彫刻する。青春は放置しても過ぎていく。君が君自身を彫り上げていくのだ。」今道氏は、その言葉に涙が出るほどの感動を覚えます。でも、その思いをすぐに伝えることはしなかったのです。結局、感謝の言葉を伝える機を逸します。それがいつまでも、心の痛みとして残ることになります。

 「『思いは通じる』とは、夢より儚い神話で、語ること、書くこと、つまり言語なくして、または行為なくして、他者に通じるという奇蹟を信じてはならない」と、氏は語っています。人生には、感謝の気持ちを、目を見ながら、言葉で伝えなくてはならない大切なときが何度もあります。メールやラインではだめなのです。忘れないでください。

 ここに居る皆さんは、市ヶ尾高校で三年間一緒に過ごす仲間です。毎日のように顔を合わせる仲間です。いくつもの岐路を選択しながら、奇跡的に出会った仲間です。

 でも、卒業したら、この先何十年も出会うことはないかもしれない。もう二度と出会うことはないかもしれない。

 それでも、いつも鮮やかに甦るのは、「良い思い出」と「心に残った言葉」と「伝えられた思い」です。

 これからも、一日、一日を大切にして、出会いを大切にしてください。

 3年生は、風邪を引かないようにして、自分と向き合って冬を越えてください。

 来年の春、なりたい自分になるための、桜を咲かせてください。


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